部屋に差し込んだ月明かりが、秋也と典子の体を照らし出す。

秋也が動くと、ベットが軋む音が響いた。

秋也の下で、軽く閉じていた典子の瞳が開かれる。

自分と同じように肌を晒している秋也の胸に指を這わせた。



「秋也くん・・・綺麗」

「綺麗?俺が?」

「うん。大きな傷なんて・・・一つも残っていない」

「・・・典子だって・・・・・典子の方が、綺麗だよ」



秋也が言うと、胸の上を滑っていた典子の指が止まる。

唇が悲しそうに笑みの形を作った。



「・・・川田くんのお陰なんだよね」

「・・・」

「川田くんが・・・守ってくれたから、私達、大きなケガもなく、此処に・・・」



典子は大切そうに自分の体を両腕で抱きしめた。



「私、何度も死にたくなったけど、死ねなかった。
 自分の体を見るたびに、川田くんを思い出すの。
 川田くんが守ってくれたから、此処に居るんだって、思い出すの。
 秋也くんを見るたびに、川田くんの言葉を思い出すの。
 この先どんな素敵な小説を読んでも、川田くんの言葉以上に綺麗な言葉なんて無い」



秋也は微笑ったまま涙を流す典子を、優しく抱きしめた。

体を遮るものが無いので、典子の体温を直に感じることが出来た。

典子の鼓動を感じることが出来た。

典子の柔らかな胸の感触を感じることが出来た。

典子は、生きていた。



「秋也くん・・・川田くんは、消えたりしないよね?
 私達がいる限り、川田くんは、ちゃんと、側に・・・」



秋也は、辛そうに言葉を紡ぎ出す典子の唇を、自分の唇で塞いだ。

そっと唇を離して、枕元にある時計を見ると、0時を過ぎていた。

5月23日が始まったのだ。




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何となく思い浮かんだの書いてみました。
二人にとって、自分の存在こそが足枷になるんだろうなぁ、と思って。
初めから終わりまで思いつきで書いたので支離滅裂です。
挙句とても短いですが、まぁ、これはこれで愛嬌・・・!